きものの基本要素

きものが何であるかを語るうえで、最もシンプルな基本要素は次の2点であると考えます。

 「きものの基本要素」とは
  一、 もとは一枚の布であること
     ※着物を縫い合わせてある糸をすべてほどいて布を並べなおすと、また元の一枚の布(以下の図)になります。
  二、 その布は、人がまとう衣服であること
     ※衣食住の「衣」であるということです。

図は反物を広げた状態での、長着を仕立てる時の反物の裁断イメージです。

当たり前すぎて異論もありそうですが、この二つの事柄が、きものを考える上での原点にほかなりません。なぜなら、私たちが知る「きもの」という服装において、どんな時代のどんな着物も、これらの事実は共通しているからです。少なくとも、ここから「きもの」の発展は始まります。着物に対して現在考えられている、きものの基本と思われがちな和装の知識や着用時の格式をはじめ、あらゆる技法や活用手法などのすべてがここに帰結すると言っても過言ではありません。つまり、布を知れば、その着心地やコーディネートが見えてきます。衣服であることを知れば、着る目的や着るための手間や工夫が見えてくるのです。これらのことを最初に確認したうえで、未体験の「きもの」の世界を楽しみましょう。