採寸マニュアル

仕立てをご依頼のお客様へ(お願いと注意事項)
 
反物商品のお仕立てを同時にご依頼の場合、お客様のお身体の寸法情報のご呈示が必須となります。
寸法情報をご呈示頂けない場合、申し訳ございませんがお仕立てのご依頼をお受けすることができません。
予めご理解、ご了承のうえ、ご注文下さいますようお願いいたします。

着物の仕立てに必要なご自身の各部詳細寸法を詳しく把握なさっている方は、「和服誂え寸法表」にご記入の上、
ご注文後に別途メールまたはFAXで当店までお送り下さい。

着物の仕立てをオーダーするのが初めての方、ご自身のサイズの採寸方法がわからない方は、
以下の採寸マニュアルを参考に、できるだけ正確な必要データをご提示下さい。
メールやお電話でお問い合せいただければ、より詳しくご説明させていただきますので、お気軽にご相談下さい。

着物の着姿や着心地というのは、仕立ての寸法がとても大きく影響いたします。
ご面倒をお掛けいたしますが、一度覚えていただければ、着物の扱いがとても便利で楽しくなります。
どうぞご理解とご協力の程、よろしくお願いいたします。

なお、お仕立てには、着物(長着)の場合で、3週間~4週間程度の日数がかかります。できるだけ早くお届け
できるように努力いたしますが、お誂え品のため、余裕を持ってご注文下さいますようお願いいたします。

また、当店の仕立ては国内手縫い仕立てを標準としております。すべてが職人の手仕事のため、ご指定の寸法に対し、
まれに極わずかな差異が生じる場合もありますが、1分(約4mm)前後の差異であれば誤差の範囲とさせていただいて
おります。これは計測方法、着方によっても生じうるものですが、着用上問題となることはほとんどございません。
また、着物は直線裁断の布を曲面のある体に着る衣服のため、洋服と違い、胸回りなどにシワができるのはある程度は
自然なものといえます。これらの点につきましても、ご理解のうえ、仕立てをご依頼下さいますようお願いいたします。
もちろんご着用上、明らかな違和感や不都合がある場合には、無料でお直しをさせて頂きますのでご安心下さい。

当店のお仕立代は、反物の商品価格には含まれておりません。裏地や仕立て代はオプション料金として別途必要です。
もちろん、反物のみの販売も行っておりますので、用途・ご希望に応じてご用命下さい。
 
各種お仕立てご依頼時は、以下の詳細情報のご提示をお願いします

1.ご自身のボディサイズと裄と着丈(必須)

 身長、胸囲、腰回り(ヒップ)、裄、着丈の各サイズを、以下の図をご参考にヌード寸法でお測り下さい。
 なお、裄、着丈はcmで測っていただければ結構です。鯨尺がおわかりの方は、○尺○寸○分でご記載下さい。
 お手元に着物や浴衣などがありましたら、それを羽織って各部寸法の差分を測り、以下の採寸データを求めていただ
 くと確実です。その場合、計測誤差が出ないよう、洋服を脱ぎ、できるだけ下着姿で羽織って採寸を行って下さい。

  採寸箇所必要度採寸の仕方
 1. 身長(必須) 背筋を伸ばし、できるだけ正確に測定して下さい。
 2. 体重(任意) 体重は体形を推測するためで、採寸上は参考情報です。
 3. 胸囲(バスト)必須 乳首の位置で図って下さい。
 4. ウエスト(必須) おへそ回りを図ります。
 5. 腰回り(ヒップ) 必須 腰回りは腰骨の周囲で測って下さい。    
 6. 裄(必須) 裄(ゆき)は着物の袖の長さを決める寸法です。
    裄の計測は、図のように手を斜め45度下に伸ばした状態で、
    背中心から手首にあるグリグリ部分までの長さを測ります。
    洋服の袖丈とは異なりますので注意して下さい。
 7. 着丈(必須) 着丈は、着物に帯を締めた状態での裾丈の位置を決める寸法です。
    着丈は、図の長さを実測していただくか、以下の計算式で求めます。
    着丈=背中心の首の付け根から垂直に測った床までの長さ- 4cm*
    * -4cm:これは床から足首のくるぶしの下端までのおよその長さです。
    この4cmを引き算せず、足首のくるぶしが隠れる位置までの長さを測定して頂いてもOKです。
    この寸法が着物の裾丈の長さになります。長め、短めを好みで加減してもOKです。
 
2.ご自身の全身写真(任意)


 当店では、できるだけ正確な寸法で仕立てた商品をお届けするため、着用する方の全身写真をお願いしております。
 ご自分の体形が標準体型と比べ、大きく違うと思われる部分がある方は、全身写真(正面・横)をお送り下さい。
 特に、細身の方、恰幅のいい方は、必ず写真添付をお願い致します。

 全身写真は、身長を測るときと同様に背筋を伸ばした姿勢で、正面と横向、背面の3点をお送り下さい(正面と横向の
 2点の写真だけでも結構です)。なお、撮影時は着衣のままで結構ですが、できるだけ薄手の服装でお願いします。

 胸の厚みや腹回りの大きさ、肩の張り具合などに特徴がある場合、標準寸法で細部のデータを割り出しますと、
 どうしても体型差による仕立ての誤差が生じます。できるだけぴったりで着心地の良いお仕立てをお届けする
 ため、初めてご利用の方はぜひご協力下さい。なお、全身写真のご用意は、首から下の写真でもOKです。
 
3.各部寸法詳細(おわかりの方)


 1.でご説明した事項の他、最低限、以下の細部寸法が和装品の仕立てには必要となります。
 初めての方など、細部の寸法がおわかりにならない方は、1.の情報と2.のお写真によって、
 各部の寸法を割り出して仕立てを行うことも可能ですが、ご自身の寸法データをお持ちの場合は、
 下記の情報を参考にメール、FAXなどでご提示ください。

 ▼必要な各部寸法(計算式は体型からの割り出し方法ですが、誤差がありがちになります)

 着物(長着)
  着丈 = 背中心(衿巾の下端部分から足元の踝(くるぶし)まで ※実測必須
  身丈 = 着丈+3~5cm
  裄 (身長×0.4+3cm)
  袖丈(身長×0.3)
  身幅(前幅)
  身幅(後ろ幅)
  褄下(衿下)(身長×0.5±5cmまたは身丈の1/2)
  内揚げ(前)(身長×0.4)※帯を締めた時に隠れる位置にします。
  内揚げ(後ろ)内揚げ(前)-1寸(約3.8cm)※帯を締めた時に隠れる位置にします。
  衿幅     通常、1寸5分(約5.7cm)
  共衿(長さ) 標準で1尺3寸(約49cm)※目安として身長170㎝前後までの寸法です。

 羽織 
  身丈(背中心から)長着の着丈- 1尺3寸(約49cm)(または、実測で膝上あたりまでの長さ)
  裄  長着の裄+2分(約8mm)
  袖丈長着の袖丈+2~3分(約8~12mm)
  身幅(前幅)  長着の寸法から割り出し可能
  身幅(後ろ幅) 長着の寸法から割り出し可能
  乳下がり(肩下)羽織紐の取り付け位置

 袴
  紐下(前) 実測必須 注)帯を締める位置や着方で変わります)
  紐下(後) 割り出し可能マチ下割り出し可能(標準寸法の場合)
  ※馬乗り袴のみ必要です。
  紐丈(前)割り出し可能
  紐丈(後)割り出し可能
  相引   割り出し可能
  前脇   幅割り出し可能
  後ろ幅  割り出し可能
  腰板(ヘラ付)腰板の有無を指定(標準は腰板有)

 長襦袢
  身丈(背中心から)長着の着丈- 5cm
  裄  長着の裄- 2cm
  袖丈 長着の寸法から割り出し可能
  身幅(前幅)長着の寸法から割り出し可能
  身幅(後ろ幅)長着の寸法から割り出し可能
  褄下(衿下)長着の寸法から割り出し可能

4.長着と羽織の各部名称


 各部寸法を指定する名称を以下に図示します。専門用語にもなりますが、覚えておくと便利です。
 
長着の各部名称





羽織の各部名称


 
和装品の種類毎の採寸ポイント

1.着物(長着)の仕立てについて

(1)身丈の長さの決め方

 着物の丈の長さには、着物の背中心の衿の付け根(あるいは肩山)から裾までの長さを測った「身丈」と、
 着物を着て帯を締めた状態で同様に測った「着丈」とがあります。実際に仕立てる長さは「身丈」の方です。
 帯を締めることで裾が上がりますので、「身丈>着丈」となるように3~5cm程度の長さを着丈に加えて身丈と
 します。男物長着は「対丈」といい、「身丈=着丈」として仕立てられる場合が一般的ですが、実際には、着丈
 に対し身丈が長くなるように仕立てます。

 身丈を決めるためには、実測した着丈に基づいて身体の特徴などを加味した上で身丈とします。
 着丈を測る際は、実際に試着用の着物や浴衣を羽織って、その差異を測るのが簡単で正確な方法です。
 お手持ちの着物や浴衣があるなら、次のようにして着丈を測って下さい。
 
 ・採寸する時は、洋服を脱ぎ、実際に着物を着て帯を締めて測って下さい。
  このとき、背中の帯上の上半身にこぶし一つ分くらいのゆとりを設けておきます。
  上半身にゆとりを設けることで、両手を上げても着物が突っ張らず楽に動けます。
 ・標準的な「着丈」は、帯を締めて着付けた状態で、裾が足の甲に触れるか触れないか(足の踝がちょうど隠れる
  くらい)の長さになるようにします。
 ・帯を締める前の、羽織ったままの状態では、着物の裾が床に触れるか触れないかの長さとなるのが適当で、
  これが実際の「身丈」の長さとなります。
 ・試着した着物の丈が短い場合は「足りない長さ」を、長すぎる場合は「余分な長さ」を測り、試着の着物の身丈
  から加減して自分の着丈を計算します。
 ・なお、お好みにより、標準より短めにしたり、長めに仕立てる場合もありますが、いずれもあまり極端ですと、
  着ていて落ち着きません。少なくとも足袋を履いて、足首の肌がわずかでも見えるのは短すぎ、床につくのは
  長すぎるとお考え下さい。

 なお、身長から割り出す身丈の標準寸法は、身長×0.85(±2%)、または身長 - 26cm(±1cm)とされますが、
 この値は短めの丈となりがちです。

 木綿など、縮む恐れのある生地で仕立てる場合は、特にご指定のない限り、3~5cm程度長めに仕立てます。


(2)裄の長さの決め方

 裄は手を斜め45度に下げ、真っ直ぐ伸ばした状態で測ります。
 首の付け根の中心から、肩を通り手首の骨のグリグリの部分にかかる程度の長さを測って下さい。
 なで肩の人の場合はやや短めに、いかり肩の人の場合はやや長めに取ると具合がよいでしょう。
 袖の先が手の甲を覆うような位置だと長すぎて邪魔になります。

 ちなみに、身長から裄を割り出す場合の標準寸法は、身長×0.4+2cmとされていますが、この計算式では
 やや短めとなる場合が多く、生地に余裕があるなら、あと+1cmとしたほうがよいでしょう。
 裄が長い場合は、肩幅より袖幅を広く仕立て、上半身の余分な生地のだぶつきが少なくなるようにします。

(3)褄下の長さ

 褄下(衿下)は、着物を着た時に帯の右下に覗く衿先の長さを決める寸法です。
 通常は帯の下に5~8cm程度はみ出す位となるように、衿の先から裾までの長さを決めて測ります。
 衿先の長さが長すぎても短すぎても、見た目に悪く、着崩れや動きにくさの原因にもなります。

 標準的な割り出し方は、身長×0.5±5分(約2cm)程度とされていますが、この計算式では、股下寸法の短い人では、
 褄下が長すぎて除く衿先が短くなりがちです。その場合、身長ではなく「着物の身丈の1/2」とした方が正確です。

(4)身幅の決め方

 身幅は正確には、後ろ幅+前幅+合褄幅の合計寸法で、これらを腰回りのサイズから割り出します。
 寸法の割り出し方は、条件によっても異なりますが、一般的には腰回り寸法+4~5cmとします。
 5cm前後の余分は下着などの厚みと余裕を持たせての考慮です。
 着物を正しく着た時に、上前の衿下のラインが右の脇縫いの線にぴったり重なるのがちょうどよいサイズです。
 身幅が狭いと、前がはだけやすくなり、逆に身幅が広すぎると歩きにくくなります。
 ただし、腰回りが110cmを超える方の場合、身幅を少し狭めにしておいた方が歩きやすくなります。
 また、茶道で着る着物を仕立てる場合は、前が肌蹴にくいように、前幅を五分(約2cm)程度広目に仕立てる
 場合もあります。ご希望に応じてご指定下さい。

(5)袖丈の長さ

 袖丈は、袖の縦方向の長さをいいます。袖丈は身長とのバランスを考えて決めます。
 標準寸法の割り出しでは、身長×0.3とされますが、これも身長が高いと長すぎる場合が多々あります。
 通常は、身長170cm前後までなら1尺3寸(約49cm)程度に、身長170cm~180cmで1尺3寸5分(約51cm)前後、
 身長180cm以上なら1尺4寸(約53cm)程度とするのが適当で、着る人の好みでこの多少加減してもよいでしょう。

(6)衿について

 着物の衿の幅は、一寸五分(約5.7cm)が標準寸法で、通常はこの寸法通りで仕立てます。
 ただし、首が太い人は、衿幅を太め(広め)に仕立てると対照的に首筋が細く見え、
 逆に首が細い人は、衿幅を細め(狭め)に仕立てると首筋の細さが目立たなくなります。
 調整の幅はほとんどミリ単位のレベルですが、わずかな違いが大きな差となる部分です。

(7)共衿の長さについて

 長着には、「共衿」という短い長さの衿を重ねて縫い付けます。共衿は、着物の地衿の汚れや破れを防ぐための
 保護用パーツで、共衿が傷んだ場合は、地衿と交換して仕立て直すと、元通りきれいに着ることが可能です。
 共衿の縫い止めてある端の部分となる、上前の衿の横のラインは意外と目立ちます。
 その位置が高すぎると子供っぽく、落ち着きがないようにも見えてバランスがよくありません。

 この位置は、身長や体型にもよりますが、着物を正しく着て角帯を締めた時、概ね帯の上端と剣先のちょうど
 中間に位置するように決めるのが、もっともバランスよく見える位置となります(下図参照)。
 共衿の長さは、背の首の付け根の中心から、以下の図に示した適切な長さとなる位置までを測ります。
 身長170cm前後の方の場合、標準的には1尺3寸(約49cm)前後で、実際の共衿の長さはこの2倍の寸法です。

(8)内揚げの位置

 男ものは対丈で仕立てるため、女ものの御端折りに相当する余り布の部分を、最初からお腹の辺りで着物の
 裏側にタックを取って縫い止めておきます。これを「内揚げ」といい、将来着丈を長く仕立て直したり、
 擦り切れた裾を切り詰めて縫い直す時などに使用します。

 内揚げは、前身頃と後ろ身頃のそれぞれにあり、縫い目が帯を締めた時に、ちょうど帯の下に隠れるように
 仕立てます。内揚げの位置を決めるには「揚げ下がり」という、肩山から内揚げ位置までの長さを指定します。
 標準寸法では、身長×0.4を前の揚げ下がり位置としますが、おなかの出方などで位置を加減します。
 後ろの揚げ下がり位置は、通常前より一寸ほど高くします。

 帯の上や下からこの縫い目が斜めに横切るのは美しいとは言えませんので、必ず適切な位置となるよう、
 実際に帯を締めて確認して下さい。


※内揚げの位置が高すぎるNG例。
 赤いラインが内揚げの縫い目です。


2.羽織の仕立てについて

(1)羽織の裄

 羽織の裄は、下の着物がはみ出ない長さにするのが基本です。通常、長着よりも2分(約8mm)程度長く取ります。

(2)羽織の袖丈

 羽織の袖丈は、長着よりも2~3分(約8~12mm)長く取ります。つまり、長着の袖よりもやや一回り大きくします。

(3)羽織丈

 羽織丈の長さは一般に関東では短め、関西では長めが好まれる傾向ですが、当店では膝丈程度を標準としております。
 標準寸法では「羽織丈=長着の着丈- 1尺3寸(約49cm)」となりますが、長く感じる場合は膝上くらいがお勧めです。
 長すぎる羽織は、立ったり座ったりする時に邪魔になりますし、脱いだ時にもかさばる荷物となりますので、実用性と
 お好みを吟味の上、ご指定下さい。また、見た目にもできるだけバランスのよい長さをご確認の上でご指定下さい。

(4)羽織の乳の位置

 羽織紐を取り付ける小さな環を「乳」といいます。乳の位置は、「乳下がり」と呼ばれる寸法で示されます。
 これは、羽織の肩山から乳をつける位置までの長さです。乳の位置を計算式で求めるのは困難なため、
 通常は、着物を正しく着て姿勢を正して立った時、着物の剣先と角帯の上端とのちょうど中間の位置か、
 それよりも好みで5分~1寸程度下げるのが適切です。これを目安に位置を確認し、ご指定下さい。

3.長襦袢の仕立てについて

(1)長襦袢の裄

 長襦袢の袖は、着物からはみださないサイズとします。必ず合わせる着物の寸法を確認してご依頼下さい。
 当店では、男性の場合、長着の裄よりも5分(約2cm)程短く仕立てることを標準としております。
 裄丈の違う複数の着物と合わせてご利用の場合は、一番短い裄の長着に合わせることになりますが、
 あまり短すぎると、袖が落ち着かない着心地となり、長着の袖口が汚れやすくもなりますのでご注意下さい。

 なお、長襦袢の袖口は、当店では関西式の袖付け(「広袖」と呼ばれる、袖口の下半分を縫い塞がない形状に
 仕立てます。袖口の位置には「飾り糸」という糸で印のように縫い止める仕様です)を標準としております。
 関東式の袖付けは、袖口以外を縫い合わせて仕立てますが、現在はほとんど用いなくなっております。

(2)長襦袢の身丈

 長襦袢の身丈は長着の「着丈」よりも2~3cm前後短くし、着物の下から長襦袢の裾がはみ出ない長さに抑えます。
 薄物など透ける着物の下に着る長襦袢の場合、襦袢が外から透けて見えますので、裄の長さや裾の長さが短すぎ
 ないようにします。裾からはみ出さないぎりぎりの長さにうまく収めると、着慣れた姿に見えます。

(3)長襦袢の形状の違い

 長襦袢の仕立てには、衿の仕立て形状によって「関東仕立て」と「関西仕立て」の二種類の仕立て方がありますが、
 当店ではお客様のご指定がない限り「関西仕立て」を標準としております。長着と同様の衿先のある関西衿の方が、
 着る時の位置合わせが簡単で、竪衿(たてえり)の幅だけ打ち合わせが深くなるので、動いても肌蹴にくくなります。

 また、長襦袢の仕立て方には袷と単、胴抜きなどがありますが、当店では単仕立てを標準としております。
 夏物などは完全な単仕立てとなりますが、単や袷の着物に合わせる襦袢では、腰から下に居敷当てを付け、
 袖の部分を無双袖といって、共生地を二枚重ねて袋状に仕立てる形となります。
 長襦袢の仕立てに関しまして、ご希望がございましたら、ご注文の際、事前にご相談下さい。

長襦袢の形状と各部名称


4.袴の仕立てについて


(1)袴の形状と種類

 袴には様々な種類と形状がありますが、当店では最も一般的な「平袴」という種類の袴を標準としております。
 袴の仕立て方には「馬乗り袴」と「行燈袴」の二種類がありますが、当店では「馬乗り袴」を標準としています。
 外見は同じに見えますが「馬乗り袴」の方が着用時のスタイルが良いことや歩きやすくて活動的なため実用的です。
 行燈袴は座った時などに裾が広がりやすく、中の着物が裾からはみ出てしまう可能性もあります。ただしトイレの
 時に袴の紐を解かずに裾をまくり上げて用が足せますので、これを重要視する場合は行燈袴でもよいでしょう。

 野袴、武道袴など、標準タイプ以外の袴をご希望の場合は、ご注文前にご相談下さい。

(2)袴丈の決め方

 袴の採寸項目は基本的に「紐下」という、前丈の長さだけをご指定いただければ、あとの部分の寸法は割り出せます。
 紐下の長さは、下の図を参考に、前紐の下端から袴の中央のひだ(三の襞)の下端までの長さを測って下さい。
 袴丈を測るときは、姿勢を正し、真横から見たときに、袴の裾がくるぶしのあたりを横切る長さが適当です。
 足首が見えるようだと短すぎ、足の甲が隠れるほどでは長すぎる丈になります。

 なお、紐下の長さを決定するために、必ず確認しておく必要があるのが、帯を締める位置と、袴の着け方です。
 帯を締める位置が上下すると、袴丈も当然上下しますから、必ずご自分の帯位置をご確認の上で測って下さい。

 袴の着け方によって生じる袴丈の差異にもご注意下さい。多くの書籍や着付けの指導では、そのほとんどが帯の
 上端を1~2cm程度見せるように、袴の前紐を当てて着つけるようにされていますが、当店では本来の袴の付け方
 である、帯より上に袴の前紐を当てる着装を推奨いたします。現在でも武道などでは帯を見せる着装はありません。
 帯を見せるのは、装飾上帯の色柄を見せたい場合で、この方法では袴が下にずり落ちやすくなります。

 次に、袴の後ろ丈に影響するのが帯の締め方です。袴下の帯結びは、必ず一文字でなければならないわけではなく、
 貝の口や片ばさみでも構いません。ただし、この帯結びの形状により、袴の後ろ腰部分の膨らみが変わるため、
 それを考慮して後ろ丈を調整します。

 以上の違いをご考慮のうえ、お客様の好みやご都合で、袴丈の長さをご指定下さい。
 よくわからない場合は、お問い合せいただいた上でお決めいただくか、当店にお任せ下さい。

(3)袴の襠(マチ)の高さ

 袴の襠とは、内部の股の部分に設けられる菱形の布をいいます。馬乗り袴や野袴など、襠のある袴では、
 両足に分かれるように内部を仕立てます。袴の種類や用途によって、この襠を付ける位置が変わります。
 ご希望の襠の高さがおわかりであれば、ご注文時に「マチ下」の寸法をご指定下さい。
 よくわからない場合は、お任せいただければ、標準的な位置で仕立てを行います。

 一般には、日常用や旅行などの外出用には、高めの襠を、お茶席など室内での着用が主となる場合の袴では、
 襠の低い袴が向いています。

(4)袴の腰板について

 袴の腰板は、袴の後ろの台形の固い板状の部分をいいます。この腰板がある袴とない袴とがありますが、当店では
 図のような標準的な平袴の場合、腰板のある袴を標準としております。

 腰板の中の芯の材質は、標準の仕様では厚紙を重ねたものを使用します。袴を水で丸洗いすると、この腰板の部分が
 型崩れしますが、袴は頻繁に洗濯を行うものではありませんので、通常の用途であれば厚紙芯で問題ありません。
 また、正絹の袴はガード加工をあわせてご指定いただくことをお勧めします。

 なお、オプションとなりますが、腰板の芯材に水洗いも可能なウレタン系の材質ものを指定することもできます。
 ご希望のお客様は、ご注文時に別途ご相談下さい。

袴の各部名称


 
仕立て方の種類と裏地について

1.和装品の仕立て方と種類

 着物や羽織は主に裏地の有無によって、複数の仕立て方があります。仕立てをあわせてご依頼の場合、
 以下の中から反物毎にご指定下さい。当店のお仕立ては、「国内手縫い仕立て」を標準としております。

 単(ひとえ)着物
  正絹着尺など裏地を付けない着物の仕立て方です。浴衣、麻縮みなど、夏用の生地はすべて単仕立てとなります。なお、背縫いの内側に「背伏せ」を付ける場合は、オプションとなります。
  正絹着尺の場合は、お好みにより単にも袷にもできます。
  長襦袢は通常単仕立てにします。礼装用など、袷仕立ての長襦袢をご希望の場合はご注文の際にご相談下さい。
  袴地も通常は単仕立てとします。希に薄手の紬や御召生地で仕立てる場合に裏地を用いることもあります。

 袷(あわせ)着物
  羽織紬、御召などの正絹着尺、木綿着尺など秋冬用の着物や羽織は通常袷仕立てとします。袷仕立てには、裏地全体に同じ生地を用いる「総裏仕立て」と
  女性物と同じように「胴裏+八掛(裾回し)」の裏地を用いる「額仕立て」とがあります(※2.裏地についてをご参照下さい)。
  袷仕立てでは、オプションで裏地が別途必要となります。胴抜き(どうぬき)着物羽織紬、御召などの正絹着尺、木綿着尺などよほどの寒冷地にお住まいでない限り、
  真冬でも袷の着物がかえって暑いということも多々あります。そうした場合は、裾部分と袖裏だけを袷仕立てとした「胴抜き」仕立てがお勧めです(いわゆる背広の背抜きと同じイメージです)。
  当店標準の「胴抜き仕立て」は、内揚げの縫込みから下側(裾回り)と、袖裏にだけ裏地をつける仕立て方です。
  袖部分も単とし、袖口だけに裏地か着物と共生地で裏をつけるなど、ご希望によりバリエーションにも対応しますので、ご注文の際にご指定下さい。
  特にご指定がなければ、当店標準の仕様でお仕立てを行います。

2.長着の裏地について

(1)袷仕立ての種類と必要な裏地の種類

 着物を袷仕立てや胴抜き仕立てにする場合、単の着物に居敷当てをつける場合には、裏地が別途必要となります。
 また、袷仕立ての方法も、通常の「袷仕立て(総裏)」と、女性と同じ仕立て方となる「額仕立て」、
 「胴抜き仕立て」の3通りの仕立て方からお選び頂けます。

 裏地はオプション扱いで別料金となります。仕立てをあわせてご依頼の場合は、以下の中から反物毎にご指定下さい。
 
種類通常の袷仕立て(総裏) 

※写真は木綿の正花を裏地に用いた一例です。

    額仕立て

必要な裏地 胴裏+八掛(裾回し)
紋付はこの額仕立てが一般的です。

   胴抜き仕立て

腰から上を単仕立てにします。
袖裏は有り無しが選択可能です。
写真の白い部分は補強のため、胴裏生地で居敷当てを付けたものです(オプション)。

(2)男物胴裏について

  着物の裏地に用いる生地には正絹と木綿素材とがあります。正絹素材の男物裏地を「胴裏(どううら)」といい、
  木綿の裏地は一般に、関東では「正花(しょうはな)」、関西では「金巾(カナキン)」と呼びます。
  正花も金巾も商品的には同じ物をいいますが、当店では標準で「正花」の呼び方を用いております。

  通常、正絹の着物には正絹生地の裏地(胴裏)を用い、木綿着尺には木綿の裏地(正花)を用いますが、
  お客様のご希望により、正絹の表生地の裏に木綿の裏地を組み合わせることもできます。
  木綿の裏地の方が擦れに強く丈夫で安価ですが、表の生地との相性(収縮率が絹とは異なる)により、洗濯すると
  形が歪む場合がありますので、着用目的や頻度、お好みでお選び頂ければと思います。たとえば、日常的に着物
  をお召になる場合などは正花を、年に数えるほどお召になるなら正絹の胴裏を選ぶとよいでしょう。

  なお、サイズの大きな方の袷仕立ては、キングサイズの胴裏裏地1反でも生地が足りない場合があります。
  不足生地の量によりましては、胴裏2反が必要となる場合がありますので、予めご了承下さい。
  このような場合、「額仕立て」や「胴抜き仕立て」にしますと、裏地代が多少ですが安価になります。

(3)「袖口布(そでぐちぬの)」について

  昔は男物といえば、必ずと言っていいほど、袖口に補強用の「袖口布」という別布を取り付けましたが、
  現在では、これを付ける方は少なく、当店では標準では袖口布をつけておりません。理由は、補強布のため
  袖口がやや固くなりしなやかさが欠けること、既製品では色数が少なく、着物と色合わせが難しいためです。
  袖口布の代わりに、着物もしくは裏地と共生地を用いて仕立てる手法を標準としております。
  袖口が擦り切れるほど着るという方は、オプションで袖口布を付けた仕立ても承りますのでご相談下さい。


袖部分を裏返したところ。右上の黒い部分が袖口布です。

(4)「背伏(せぶ)せ」について

  単の長着や麻縮、薄物と呼ばれる正絹の夏着尺などに、「背伏せ」という、背縫いを覆う薄布を取り付ける
  ことがあります。これは、透ける着物では見栄えのため、厚手の生地の単では背縫い部分がかさばらないよう、
  薄手の正絹生地やキュプラなどの「背伏せ布」を背縫いにかぶせて一緒に縫い付ける手法です。
  「背伏せ」は必ず必要なものではなく、透ける生地によっては背伏せがない方が背縫いのラインが目立たない
  場合もあります。当店では標準では背伏せをお付けしておりません。お好みでご指定下さい。
  なお、「背伏せ布」のお色は、標準ではお任せとなります。通常は胴裏生地と同様の色となります。
  お色の指定をご希望の際は、ご相談下さい。


背伏せの一例

(5)「居敷当(いしきあ)て」について

  お尻もしくは着座する部分を「居敷」といい、「居敷当て」とは、単仕立ての長着や浴衣の居敷の部分に、
  補強用として取り付ける布地のことをいいます。単の着物の場合、当店では後ろ身頃の部分に内揚げの
  縫い込みから裾までの長さの居敷当てを標準仕様で取り付けております(下記の写真のようになります)。
  居敷当てを付けておくと、お尻の部分が裂けることや、汗などによる汚れ、また色の薄い着物などの透け防止
  などに効果がありますが、必須ではありません。ご希望に応じて有無やサイズ、取り付け方をご指定下さい。


居敷当てを付けた単長着の一例


3.羽織の裏地について

(1)羽織の裏地の種類

 秋冬に着用する羽織は、通常袷仕立てとし、裏地として「羽裏(はうら)」や「額裏(がくうら)」と呼ぶ
 生地を用います。「羽裏」は反物状の並幅の生地を裏地として使う物で、中央に背縫いの部分があらわれます。
 「額裏」は、羽織専用のサイズの生地に図柄をあしらったもので、中央に背縫いはありません。
 羽裏や額裏をご指定の場合、別途羽裏を商品の中からお選び下さい。

 額裏は自由な表現が可能なため、絵画的な絵柄が多く、友禅などで描かれた物は高価なものとなりますが、
 お客様の好みの絵柄を特注していただくことも可能です。

 羽裏には、専用の生地以外に、サイズが合えば長襦袢生地なども使用することができますので、お客様の好みで
 個性的な裏地を用いるアイデアを自由にお楽しみいただけます。どうぞお気軽にご相談下さい。

 なお、ご希望により、夏羽織以外の羽織の生地も単に仕立てることができます。
 当店では、単の羽織は、生地が透けて見える夏羽織と同様に、全く裏地を用いない仕様を標準としております。
 背の部分を単(背抜き)にし、袖部分は袷にもすることもできますので、お好みに応じてご相談下さい。
 
     「羽裏」の一例             「額裏」の一例